搭乗口の目前に位置するこの部屋に続々と旅客が入ってゆく。出発前の僅かな時間を惜しむかのように心なしか皆小走りだ。
空港の試算によれば1時間に500人がこの部屋を利用するという。
羽田空港第一ターミナル出発ラウンジ商業エリア「CAPTAINS' TOKYO」の一角にこの特徴的なカウンターを持つ喫煙スペースはある。
カウンターはその使途に応じて高さが決められる。食事のためのカウンター高さは落ち着いた姿勢をとることができるよう低めに考えるし、バーのカウンターはバーテンと客の目線が合うよう高さをもたせる。
ところが喫煙のカウンターには「これだ」という高さが無い。市販の灰皿スタンドの高さがまちまちであるように、タバコをもった手が届く範囲ならほぼ自由に設定できる。
ならばそれを意匠にできないかと考えた。
旅客機の航路のごとく高度、速度を変化させながら運動している様を一筆書きの光の帯「LOOP」として表現した。
LOOPの水平面の高さは様々に変化する。床面から400mmの高さの面はテーブル席のベンチとして、900mm、1100mmの部分はスタンド席のカウンターとして機能する。LOOPは鏡壁に吸い込まれ、鏡像がそのまま連続してゆく。その様は搭乗ラウンジに面したガラス面に映りこみ、混雑しがちな空間に広がりをもたらす。
旅人はここで光の帯を目で追い、つかの間のショートトリップに浸る。そしてまた小走りに去ってゆく。
- 業種:喫煙スペース
- 住所:東京都大田区羽田空港3-3-2
- 第1旅客ターミナルビル2階出発ゲートラウンジ内
- 広さ:12.1坪