タイ・バンコク市内に建つ古い屋敷をリノベーションした複合施設である。ギャラリー、物販店、カフェの3セクションから成る。
我々の主な業務はファサード(外観)とランドスケープ(庭園)のデザインだった。
日本で立ちあげられたアウトドアバッグのブランド「Stream Trail」がバンコクで初の実店舗を出店するにあたり、我々は直接的な和風表現は避けながらも日本のマインドを建築で表現したいと考えた。
それぞれの棟が取り囲む庭の中心には池をつくり、そのまわりを巡りながら各セクションにアプローチできるよう回遊性のある通路を設けた。既存の建物は白くペイントし、この施設の核となる物販セクションの入口周囲にはモルタル(砂を混ぜたセメント)左官仕上げの柱と梁から成る柱廊空間を増築した。
この柱廊の梁までの高さは1.9mしかなく通常の天井高と比べても50センチ以上低い。訪れる人々は少し頭を低くしながらここを通過する。この低さは水平への広がりを感じさせ、池の景色をより印象的に見せるための仕掛けとなっている。さらに天井に鏡のように磨いたステンレス板を貼ることで、自分自身の姿や池のきらめきが映り込む非日常的な空間とした。
日本の伝統的な茶室には高さ1mにも満たない躙り口(にじりぐち)と呼ばれる入り口がある。これは極めて日本的な文化だと思う。潜る為には刀を外さなくてはならず、必ず頭を下げなければ入ることができない。つまり茶室は礼に始まる空間であり皆平等に和をもって茶を愉しむ空間であるということを入口で示している。
このStream Trail Outfitters - Bangkokは鑑賞する(或いは展示する)、買う、食す、という新しい流行や文化を発信し人々が集う場である。多様な人々で賑わいインスピレーションを刺激しあう場のゲートになるよう、この柱廊空間を躙り口に見立てデザインした。
- 業種:ギャラリー、物販店、カフェ
- 住所:タイ バンコク