「クリエイター達が自由に飛び回り集めた情報を持ち帰る巣箱」という店名の由来を聞いた我々は屋根裏部屋のアトリエを連想した。低い傾斜天井、薄暗い部屋をほんのり照らす窓からの光。街の賑わいに誘われたアーティストが窓から顔を覗かせる。そんな好奇心の生まれるシーンをかたちにしたいと思った。
店内は矩形に囲った傾斜壁をスケルトン空間に挿入しただけの単純な構成とした。屋根のメタファーである傾斜壁に囲まれたスペースはメインの売場であり、コートヤードと名付けた。これは古い家々に囲まれた広場をイメージしたもので、傾斜壁面は年月を経た素材感と賑わいを表現する仕上とした。一方、傾斜壁周囲のスペースは屋根裏部屋をイメージしロフトと名付けた。そして傾斜壁には出窓を模した大小の開口を設けた。
店内に入ると開口越しにコートヤード側を覗うことができる。そして迂回するようにロフトを抜けコートヤードへとアプローチする。ロフト側に設けたフィッティングルームや小部屋状の売場はコートヤード側から開口を通じてアクセスし、レジカウンターでは客と店員が開口越しに向き合う。このように傾斜壁に設けた開口が緩やかに空間を繋げている。
旅は日常と非日常の狭間に発見を生み、映画や絵画は現実と虚構の狭間に感動を生む。
この店舗にも屋内に見立てたロフトと屋外に見立てたコートヤードという、相反する空間を行き来し垣間見る狭間をつくることで、訪れる人々の感性を刺激する特別な場にしたかった。
- 業種:アパレル
- 住所:東京都港区南青山
- 5-3-22 Blue Cinq Point A-3 2F
- 広さ:約39.3坪