大阪の住吉大社の程近くにオープンした「みどりのひつじ」さんは、夫婦二人三脚で営まれている喫茶店です。今回、ご夫婦が入居されている建物の一階部分のガレージを改装してのデザイン計画で、コンセプトは「昭和のレトロ喫茶」。築40年以上の建物を活かしたデザインが求められました。
店内はカウンター席、テーブル席、ソファ席をゆったりと設け、ご来店されたお客様がそれぞれのスタイルにあった席を選べる空間構成。メインとなるオープンキッチンのカウンターは部屋の中央に配置し、店内の様子を見渡すことができます。カウンターの天板は素材感を重視し、何枚かの古材をパッチワークのように貼り合わせて制作。立ち上がりの部分にはレトロ調のタイルを施すことで、古さの中にも「おしゃれ感」のエッセンスを加えています。腰壁にはヌキ素材と呼ばれる下地材と解体時に出てきた天井下地材を組み合わせる事でクラフト感のあるカウンターを表現しました。カウンターバックにはアンティークの吊戸棚と古材の棚板を組み合わせ収納スペースを確保し、調理道具や食器などを雑多にディスプレイすることで、昭和の時代を感じさせるデザインにしています。
テーブル席には、敢えてかたちやタイプの異なった椅子やテーブルをセレクト。カラートーンを揃えることで、全体に纏まりをもたせました。壁面は既存の板張りをそのまま活用し、雰囲気を左右する照明は温かな光を放つレトロなブラケットライトを設置。実家に帰ったときのような、ほっと一息つける居心地の良い空間作りを心がけました。
ファサード部分も昭和の時代によく見られた木製扉やレトロ調の窓を採用し、昭和感を彷彿とさせるデザインに。既存の外壁タイルを活かしつつ、新しい外壁面が浮いてしまわないように、昭和の建物に多く用いられるリシン吹きで仕上げるなどして、施工方法にもこだわりました。お店の顔となる「みどりのひつじ」のサインもまた、ライトが当たると影絵のように浮かび上がり、柔らかな立体感を生み出しています。
まるで昭和の時代にタイムスリップしたかのような空気感。昭和を知る人も知らない人も「なんだか懐かしい、なんだかほっとする」そんな感覚を与えられるお店が表現できたのではないでしょうか。
- 業種:喫茶店
- 住所:大阪府大阪市住之江区粉浜
- 3-15-30
- 広さ:16.88坪